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福岡県北九州市若松区の港には、旧日本海軍の駆逐艦「涼月」「冬月」「柳」の3隻の船体を沈設して作られた防波堤があります。そのうち駆逐艦「柳」は、現在でも船体の一部を見ることができ、文化財としても貴重な構造物として注目されています。今回は、この軍艦防波堤についてご紹介いたします。
軍艦防波堤とは
「軍艦防波堤」とは、福岡県北九州市若松区響町の北九州港にある防波堤のひとつで、正式名称は「響灘沈艦護岸」と言います。戦後、旧日本海軍艦艇の多くが戦時賠償として連合国に引き渡されたり解体されたりするなか、何隻かの艦艇は解体された船体が防波堤として利用されたものがありました。
ここでご紹介する軍艦防波堤は、長さ770mの防波堤のうち約400mを、駆逐艦「涼月」「冬月」「柳」の3隻の船体を沈設して作ったものです。下の案内板の図にあるような感じで、沖の方から陸側に向かって順に「柳」→「涼月」→「冬月」と、一直線に並んで配置されています。
設置当初は船体そのものが防波堤の役割を果たしていたそうですが、のちに改修・補強工事などを経て、現在では「涼月」と「冬月」とはコンクリートで完全に埋設され、その姿を見ることはできず、「柳」だけは、かろうじて船体の一部が露出しており、その姿を確認することができます。
軍艦防波堤は、近年、文化財としての価値が見いだされ、港湾管理者である北九州市港湾局(現・港湾空港局)による修復および由来を解説した看板が設置されたほか、土木学会による「近代土木遺産2800選」に選出されています。今後も文化財として保存が続けられることが期待されます。
軍艦防波堤へのアクセス方法
軍艦防波堤のあたりは工業団地になっており、周囲には民家やお店など全くなく、工場しかない寂しいところです。有名な海釣りスポットではあるようですが、地元の方々が自家用車を利用しているというのが現状のようです。戸畑駅から軍艦防波堤の約1km近くにある停留所「響灘工業団地第三」まで来る路線バス(北九州市営バス「7番」系統)があるにはあるのですが、平日の朝7時台と8時台にそれぞれ1本ずつの一日全2便、土曜日は朝8時台の1本のみで日曜祝日は運行なしです。帰りは、平日の夕方17時台と18時台にそれぞれ1本ずつの一日全2便、土曜日は夕方17時台の1本のみで日曜祝日は運行なしです。工場に通勤する方々のためのもので、観光で利用できるものではありません。
次に、徒歩で軍艦防波堤に行く方法について説明します。最寄り駅は若松駅になりますが、そこから歩くと7.5kmで1時間半ほどかかります。ですが、歩く距離をもう少し少なくするためには、途中まで路線バスを利用することをおすすめします。下の地図にありますとおり、戸畑駅または若松駅から北九州市営バス「9番」系統で停留所「若松営業所」まで行きます。このバスは平日、土日祝日、いずれも1時間に1本程度の頻度で運行しています。そして、若松営業所から軍艦防波堤までは約5kmで、それでも徒歩1時間程度の道のりとなります。
往復1時間も歩けないという場合は、若松駅や若松営業所からタクシーを利用することになります。若松駅からなら片道2,500円くらいはかかると思います。注意点としては、軍艦防波堤から戻る場合ですが、そこで流しのタクシーを捕まえることは不可能に近いと考えてください。配車アプリで呼び出すなどの方法が必要ですが、果たして来てくれるかどうかは検証していないのでわかりません。最悪、帰りは徒歩で、という可能性もあります。工夫としては、軍艦防波堤までタクシーで来て、観光する間(たぶん10分~15分あればOK)は運転手さんにその場で待機してもらい、帰りは同じタクシーで戻る、という方法がいいかもしれません。
実はこれが最もおすすめなのですが、レンタカーを借りる方法です(私はこの方法を利用しました)。免許のある方に限定されてしまいますが、この方法なら最も安くて便利でおすすめです。戸畑駅近辺にはレンタカーを借りることができるお店がいくつかありますので、そこで軽自動車やコンパクトカーなどを短時間(6時間など)で借りると2,000円台で済みます。往復でタクシー利用するよりも確実に安くなります。軍艦防波堤までの道順はそれほど複雑ではなく、交通量もそれほど多くないし、そして道幅も広いので、普段運転が苦手とされている方でも難なく運転できるだろうと思います。軍艦防波堤付近では路上駐車できるスペースも余裕でありますので、車を止めて自分のペースでゆっくり観光することが可能です。
軍艦防波堤を訪ねてみたレビュー
Googleマップを見ながら、ここかなと思われる道を進んでいくと海に面した場所に到達します。道中の標識や目印などは特に設置されていないので、ナビや地図だけが頼りです。しかし、現場に到着し、ここが軍艦防波堤だということは、すぐにわかりました。駆逐艦「柳」の艦首がこちらを向いてデンと構えている姿が一番に目に入るとともに、軍艦防波堤の案内板、説明板がそれぞれ設定されていたからです。
私が行ったのは土曜日のお昼過ぎでしたが、防波堤で海釣りをしている人たちが数人いました。ここは海釣りでも人気のスポットのようですから、土日祝日の早朝や夕方には海釣りの人で混雑する可能性もあります。だからと言って特に問題はないとも思うのですが、人が写り込まない写真が撮りたいなど、お考えの場合には、混雑しそうな日時を避けて行かれるほうがいいかもしれません。
上でも説明したとおり、船体が見えているのは駆逐艦「柳」です。「柳」という名の駆逐艦は2隻あったそうで、こちらは桃型駆逐艦4番艦で、初代「柳」と呼ばれています。1917年に佐世保海軍工廠で建造された純国産。第一次世界大戦では、はるばる地中海まで赴き海上護衛に従事、1932年の第一次上海事変において活躍しました。そんな100年前に活躍した国産軍艦に会えるのは感慨深いです。
周囲をグルっとまわってみます。露出した鉄の部分が「柳」の船体だと思われますが、真っ赤に赤さびた姿に長い時間の経過を感じます。触ってみると、意外にもボロボロと崩れる感じはしませんでした。このままずっと現状が維持されることを祈ってやみません。
「柳」の全長は88mだそうです。艦首から艦尾まで歩いてみると、とてもコンパクトな駆逐艦だったことがわかります。艦首および艦尾と思われる部分は、船体の一部と思われる金属がそれぞれ露出しています。側部も露出して残っているので、ここからここまでが「柳」だとわかるようになっています。
「柳」の艦首から来た道を戻る方向にはコンクリートの下に駆逐艦「涼月」が、そして更にその先には駆逐艦「冬月」が埋まっているのでしょう。その姿を見ることはできませんが、すぐ近くにいるんだなと、その存在を感じることができたような気がしました。
まとめ
今回ご紹介した軍艦防波堤は、アクセスが容易とは言えませんし、誰もが楽しめる観光スポットではないかもしれませんが、日本の近代史の1コマを伝える貴重な文化遺産であることは間違いありません。ご興味のある方には是非一度足を運んでもらいたいと思う場所です。
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Have a nice trip!