レトロな鉄道ひとり旅、「SL冬の湿原号」で行く冬の釧路湿原の旅
雪景色の中、黒い煙を吐いて走るSLを見たことがありますか?
もしそうなら、「SL冬の湿原号」に乗るとどんな感じなのか想像がつくはずです。
レトロな客車の車窓からは、銀色に輝く釧路湿原とそこをゆるやかに蛇行する釧路川の絶景を眺めたり、タンチョウヅルやエゾシカなど珍しい野生動物にも出会えるのです。
今回は、SL冬の湿原号の詳細や予約方法、出発地点となる釧路へのアクセス方法、SL冬の湿原号に乗車してみて気づいたことについてご紹介します。
SL冬の湿原号とは?
「SL冬の湿原号」とは、JR北海道で毎年1月~3月の土日祝日を中心に運行している観光列車です。各運行日には、釧路~標茶の間を一日一往復し、往路;釧路11:05発・標茶12:35着、復路;標茶14:00発・釧路15:42着のスケジュールとなっています。
釧路~標茶の間は48.1kmで、通常はディーゼルの普通列車で50分程度ですが、SL冬の湿原号はその1.5倍の1時間30分かけて景色を眺めながらゆっくりと走行するようになっています。
SL冬の湿原号に乗車する区間や、往復乗車、片道乗車など方法はいろいろありますが、一番多いのは、釧路と標茶の間を日帰りで往復乗車する方法のようです。もちろん、釧路から標茶まで片道だけ乗車して、帰りは普通列車で釧路に戻ったり、あるいは釧路から標茶まで片道だけ乗車して、さらに普通列車を乗り継いで網走まで行くといった方法なども面白いです。
列車はC11型というSL(蒸気機関車)が、5両の旧型客車(14系客車4両と43系カフェカー1両)をけん引する編成。4人掛けのボックス席をメインにしたレトロな雰囲気の車内です。
旧型客車とはいっても内装はリニューアルされていて不便はありません。1号車、3号車、5号車には洋式トイレ、1号車、3号車、4号車、5号車にはスーツケースなど大きな荷物を収納できる荷物置場、1号車、5号車にはスマホなどの充電ができる電源が設置されています。
1号車と5号車は特別仕様の「たんちょうカー」となっており、釧路川に面した側、つまり標茶方面に向かって進行方向左手側(釧路方向に向かっては進行方向右手側)の座席が、窓に向かって一列に並んだカウンター席になっています。ひとり旅なら、1または5号車「たんちょうカー」のカウンター席(座席番号に“D”がつく席)を狙ってみることをおすすめします。
また、1号車と5号車の端部には、釧路川に面した側、つまり標茶方面に向かって進行方向左手側(釧路方向に向かっては進行方向右手側)に車窓を眺めることができる大きな窓のある展望通路がそれぞれ設けられており、展望通路の先には列車の前面展望または後面展望を楽しめる窓もあります。
2号車、3号車、4号車には昔なつかしい「ダルマストーブ」が設置されています。ダルマストーブは暖房設備であるだけではなく、その上では、2号車カフェカーの売店で購入したスルメやコマイを焼いて食べることもできます。
2号車の売店では缶ビールや釧路の地酒「福司」のカップも売っていますので、焼いたスルメで一杯やりながら車窓からの釧路湿原を見物という楽しみ方がおすすめです。
SL冬の湿原号の予約方法
SL冬の湿原号は全車指定席のため、乗車するためには乗車券(釧路~標茶の片道:大人1,290円)とは別に指定席券(乗車区間にかかわらず片道:大人1,680円)が必要です。SL冬の湿原号は冬季限定であるうえ、年々人気が高まっているため、早めに座席を予約し指定席券を購入しておくことをおすすめします。
SL冬の湿原号を含め、JR線の指定席券は、乗車一ヶ月前の午前10時00分から予約・購入が可能となります。全国JR駅にある「みどりの窓口」や指定席券売機、おもな旅行会社などで予約・購入することができます。
また、JR東日本のインターネット予約サービス「えきねっと」によりオンラインで予約・購入することも可能です。私のおすすめは「えきねっと」です。
「えきねっと」のメリットは、乗車一ヶ月前の午前10時にあわせて「みどりの窓口」や指定席券売機に並ぶ必要がなく、家にいながら指定席券の予約・購入ができるという点です。
また、「えきねっと」では、乗車日の一ヶ月と一週間前(同曜日)の14時00分受付開始の「えきねっと事前受付」という制度があります。「えきねっと事前受付」をしておけば、乗車一ヶ月前の午前10時に時間通りに「えきねっと」にアクセスして指定席券の予約・購入をするという手間も省けますので、指定席券の予約・購入がより確実になります(ただし、「えきねっと事前受付」をしていても予約不成立になることもあります)。
「えきねっと事前受付」のデメリットは、シートマップで座席を選ぶことができないという点です。ただし、「えきねっと事前受付」で予約成立して指定席券を購入した後、「えきねっと」上の予約変更の操作で、シートマップを見ながら空きがあれば好みの座席に変更することも可能なので(変更手数料なし)、ひと手間かかりますが、全く予約がとれなかったという最悪の事態を回避する保険として「えきねっと事前受付」を利用しておくほうがいいと思います。
なお、「えきねっと」の注意点としては、オンラインで予約・購入した指定券を駅の「みどりの窓口」や指定席券売機で紙のきっぷとして発券しておかなければなりません。自宅から最寄りのJR東日本やJR北海道の駅で事前に発券しておいてもいいですし、現地に到着して釧路駅の「みどりの窓口」や指定席券売機で発券することもできます。
また、釧路~標茶の間ではSuicaなどの交通系ICカードが使えず、紙の切符で乗車券を購入しなければいけません。釧路駅や標茶駅にも乗車券の券売機はありますが、当日は混在しますので、指定席券を購入・発券する際に乗車券もあわせて購入・発券しておくことをおすすめします(乗車券だけを「えきねっと」で購入することも可能)。
ちなみに、「えきねっとアプリ」から指定席券を予約・購入する場合、「えきねっとチケットレス座席指定券」として予約・購入することも可能です。「えきねっとチケットレス座席指定券」なら、紙のきっぷとして指定席券を発券しなくても、アプリの画面を提示するだけでいいのです。
しかし、乗車券のほうはチケットレスで購入できないため、指定席券のほうだけチケットレスにするメリットはあまりありません(値段も発券する場合と同額です)。
指定席券を紙のきっぷで発券しておけば、乗車後に改札口で券面にスタンプを押してくれて記念に持ち帰ることもできるので、チケットレスにはせず紙のきっぷにしておくことをおすすめします。
SL冬の湿原号は、中国をはじめとした外国人旅行者にも人気のため、春節など外国人にとっての大型連休にあたる時期にはなかなか予約がとれないことがあるかもしれません。どうしても自力では予約がとれそうにない場合は、クラブツーリズムさんなどの旅行会社を通じて、SL冬の湿原号に乗車するパッケージツアーに申し込むという方法もあります。
人気列車に乗れる鉄道ツアーを提供するおすすめ旅行会社とツアーの申込み方
通常のきっぷを予約・購入する方法では、いわゆる「争奪戦」が発生しますが、予約が難しい列車でもパッケージツアーであれば簡単に予約できることがあります。
パッケージツアーだとホテルや移動手段その他が込み込みとなって大きな金額となり、簡単には申し込みにくいことから「争奪戦」にはなりにくいということと、JR線のきっぷは通常の方法で予約・購入できる「一般枠」とは別に、パッケージツアー用の「団体枠」が設けられているから、一般枠が満席でも団体枠であれば予約できるということになりやすいからです。
あと、ぎりぎりまで通常の方法での予約に挑戦してみたい場合の話です。こうしたJR人気列車の予約全てに言えることですが、予約が取れなくても毎日空席を確認していれば、ポコッとキャンセルが発生して予約が取れることがよくあるので、あきらめずに毎日チェックを続けるといいかもしれません。
たとえば、私の経験からは、乗車日の一ヶ月予約開始日の夜とか、乗車一週間前や三日前とかに、キャンセルが発生して予約がとれることが多いようです。
釧路へのアクセスについて
SL冬の湿原号は、運行日には一日一往復で、往路が釧路11:05発・標茶12:35着、復路が標茶14:00発・釧路15:42着のスケジュールです。多くの場合、日帰りの往復乗車、あるいは往路の片道乗車となりますので、出発地点は釧路です。釧路へのアクセス方法としては、飛行機、鉄道、高速バスの3種類があります。
飛行機で釧路へアクセス
釧路市街からの最寄り空港である釧路空港(たんちょう釧路空港)には、2023年1月時点で、東京(羽田)との間ではJAL、ANA、AIR DOが計6往復、大阪(関西)との間ではPEACHが1往復、札幌(千歳/丘珠)との間ではJAL、ANAが計6往復が運行しています。とくに、東京や札幌からのアクセスには便利です。
釧路空港から釧路市街へのアクセスは釧路空港連絡バスを利用します。釧路空港から出発するバスは、各飛行機便が到着後10~25分で出発しています。所要時間は、釧路空港から釧路駅前までで約50分です。釧路駅前をはじめ釧路市街までの運賃は大人950円。バス乗車券は、釧路空港では空港ビル出口横の自動券売機で購入、釧路駅前では釧路駅前バスターミナル横のチケットセンター(スーパーホテルの建物の1階)の中にある自動券売機で購入します。
冬季は積雪などの影響で飛行機は遅延や欠航のリスクがあります。できれば、SL冬の湿原号に乗車する前日までに釧路へ到着しておくことをおすすめします。
ただ、どうしても休みがとれないなどの事情がある場合、例えば、東京(羽田)7:40発・釧路9:15着のAIR DO71便や、東京(羽田)8:05発・釧路9:45着のJAL541便などを利用すれば、定刻運行なら当日に釧路に到着して、釧路11:05発のSL冬の湿原号に乗車することも可能です。
また、SL冬の湿原号で標茶から折り返して釧路(15:42着)に戻った後、釧路18:30発・東京(羽田)20:20着のAIR DO74便や、釧路19:55発・東京(羽田)21:45着のJAL544便などを利用すれば、その日のうちに東京へ戻ることが可能なので、無理をすれば、東京から日帰りでSL冬の湿原号に往復乗車することも可能となります。
鉄道で釧路へアクセス
鉄道による札幌方面からの釧路へのアクセスは、JR北海道の特急おおぞら号の利用となります。特急おおぞら号は、札幌~釧路の間を毎日6往復しており、札幌~釧路の間の片道所要時間は約4時間です。
飛行機に比べて時間はかかりますが、北海道内の移動であれば飛行機に比べて運賃も安いので、札幌からのアクセスであれば検討の価値は十分あります。北海道内のフリーきっぷを購入しているような場合には積極的に利用していいでしょう。
ちなみに、札幌6:48発・釧路10:57着の特急おおぞら1号は、釧路11:05発のSL冬の湿原号に接続可能となりますので、仮に特急おおぞら1号の釧路への到着が30分くらい遅れたとしても、SL冬の湿原号は特急おおぞら1号からの乗り継ぎを待ってくれるので、札幌から釧路への移動が当日であっても安心できます。
高速バスで釧路へアクセス
高速バスによる札幌方面からの釧路へのアクセスは、昼行バスのほか夜行バスなど多くの便が運行しています。札幌~釧路の間の片道所要時間は約5時間です。鉄道以上に時間はかかり、しかも鉄道以上に遅延も多いのですが、運賃が安いので、費用を節約したい場合には検討の価値は十分あります。
高速バスの予約サイトはいくつかありますが、北海道内の高速バスなら、日本旅行の 夜行バス予約は「バスぷらざ」や楽天トラベル
の「高速バス・バスツアー」などが使いやすいでしょう。
SL冬の湿原号に乗車してみて気づいたこと
私の場合は一人旅で、金曜日に東京から飛行機で釧路に到着し、翌日の土曜日、SL冬の湿原号に釧路~標茶を往復乗車、さらに翌日の日曜日に飛行機で東京に戻るというスケジュールでした。以下、SL冬の湿原号に乗車してみて気づいたことについてコメントしたいと思います。
SL冬の湿原号のおすすめ座席は?
釧路湿原の美しい景色を楽しむためには、釧路湿原を流れる釧路川に面した側の窓際の席が有利です。釧路川に面した側は、標茶方面に向かって進行方向左手側、釧路方向に向かっては進行方向右手側となります。
1または5号車「たんちょうカー」では、座席番号に“D”がつく席(3Dや10Dなど)がカウンター席となり釧路川に面した席となります(往路、復路とも)。2、3,4号車「ストーブカー」では、すべて4人掛けのボックス席となり、座席番号が奇数となるほうが釧路川に面したボックス席となり、そのうち座席番号に“A”または“D”がつく席(3Aや7Dなど)が釧路川に面した窓際の席となります(往路、復路とも)。
ひとり旅や2人連れの旅であれば、「たんちょうカー」のカウンター席がおすすめです。3人以上であればボックス席のほうが楽しいと思いますので、「ストーブカー」のボックス席で座席番号が奇数となるほうがおすすめです。
私は、往路では「たんちょうカー」のカウンター席、復路では「ストーブカー」のボックス席で釧路川に面した窓際の席となりました。
車窓の景色を楽しむという意味では良かったのですが、ボックス席の窓際の席は、トイレや売店に行くときにいちいち隣の人に声をかけないと通路側に出られないので、そこが不便でした。一人旅でボックス席になってしまう場合は、通路側の席のほうが気兼ねなくてよかったかもしれません。
SL冬の湿原号の車内での過ごし方
SL冬の湿原号の車内での過ごし方のメインは、何といっても座席で美しい車窓を眺めるということになります。また、ガタゴトという列車の音、SLのエンジンや汽笛の音などに耳を澄ませるというのも、鉄道旅ならではの楽しみ方です。
ただ、こういった人気観光列車ではよくあることですが、車内が騒々しくて、景色や列車の音を静かに味わうことができない場合がほとんどだと思います。私が乗車したときも、子供たちが終始はしゃぎまわっていて、かなり車内は騒々しい状態でした。
車内が騒々しい場合は、1号車または5号車の端部にある展望通路に行って車窓を眺めるか、デッキ部分にある車両扉の窓から車窓を眺めて過ごすというのもいいかもしれません。
そのほか、売店で購入したスルメやコマイを、2号車、3号車、4号車にある「ダルマストーブ」で焼いて食べてみるのも面白い体験となります。焼いたあとは売店でお酒を購入し、車窓からの釧路湿原を見物しながら一杯やるのも楽しいと思います。
SL冬の湿原号の写真や動画の撮影
雪景色の中、黒い煙を吐いて走るSLは迫力がありますし、何といっても絵になります。旅の記念にもなりますし、SL冬の湿原号のカッコいい写真や動画を撮影しましょう。写真や動画の撮影タイミングは、出発前の釧路駅、標茶駅、復路の塘路駅、到着後の釧路駅などとなります。
出発前の釧路駅で撮影
SL冬の湿原号は、10:35頃に「3番のりば」に入線して来ます。3番のりばからの撮影は人で混雑するのでいい写真が撮れないということと、動いている列車のすぐ横からの撮影となるので危ないという理由から、あまりおすすめできません。地下通路を通って隣の「4番のりば」に移動し、4番のりばから撮影することをおすすめします。
なお、4番のりばから撮影する際の注意点ですが、SL冬の湿原号が3番のりばに入線すると、先頭のSL機関車部分は4番のりばの端部から少し先の位置で停車します。
つまり、SL冬の湿原号が3番のりばに入線し終わって停車してしまうと、4番のりばからでは先頭のSL機関車部分を前から撮影することができなくなってしまうので、必ず停車前の走行している状態を撮影するようにしましょう。
標茶駅に到着してからの撮影
釧路を出発したSL冬の湿原号は12:35に標茶駅の「1番のりば」に到着します。SL冬の湿原号は10分ほどこのまま停車しています。1番のりばでSL冬の湿原号の撮影をするのもいいのですが、混雑してまともに撮影できません。時間はありますので、跨線橋を通って隣の「2番のりば」に移動し、反対側からSL冬の湿原号を撮影するのがおすすめです。架線柱があるのが少し邪魔になりますが、1番のりばからの撮影に比べれば全然マシだと思います。
その後、12:45頃に、SL冬の湿原号は一旦バックで1番のりばを出て行き、ポイントを切り替えて2番のりばに入線し直してきます。SL冬の湿原号が2番のりばに入線してくるときが撮影のチャンスです。やはり、動いている列車のすぐ横からの撮影は危ないので、跨線橋を通ってもう一度隣の1番のりばに移動し、1番のりばからの撮影をおすすめします。
さらに13:35頃、給水と整備を終えたSL機関車が、2番のりばに停車している客車の釧路側に連結する作業が行われます。動きが面白い作業なので動画での撮影がおすすめです。このときも混雑するので反対側の1番のりばから撮影したほうがいいでしょう。
復路の塘路駅での撮影
標茶を出発したSL冬の湿原号は14:38に塘路駅に到着します。SL冬の湿原号は塘路駅で反対方面の列車との行き違いにより12分間と長時間停車します。長時間停車は復路のときだけです。塘路駅に到着したら構内踏切からSL冬の湿原号を至近距離からほぼ真正面で撮影することができます。
少しすると構内踏切の警報機が鳴って反対方面の列車が到着しますが、SL冬の湿原号は反対方面の列車が出発した後、少したってからの発車となるので、あわてる必要はありません。
到着後の釧路駅での撮影
塘路を出発したSL冬の湿原号は15:42に釧路駅の3番のりばに到着します。SL冬の湿原号は10分ほど停車し、乗客が全て降車したことを確認すると回送として釧路駅を前進して出て行きます。
この場合も、動いている列車のすぐ横からの撮影は危ないので、地下通路を通って隣の4番のりばに移動し、4番のりばから撮影することをおすすめします。
まとめ
以上のとおり、SL冬の湿原号の詳細や予約方法、出発地点となる釧路へのアクセス方法、SL冬の湿原号に乗車してみて気づいたことについてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか?
レトロな客車の車窓から眺める釧路湿原の雪景色とタンチョウヅルやエゾシカなどの動物たち、旅情あふれる鉄道の旅、雪景色の中を黒い煙を吐いて走るSL、どれも日常では体験できないものばかりです。
「SL冬の湿原号」で行く冬の釧路湿原の旅は、きっと忘れられない思い出になるはずです。
↓ 釧路での最終日に空港へ移動する前に撮影した動画です。
Have a nice trip!
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