入場無料ながら展示が充実している「領土・主権展示館」と「産業遺産情報センター」

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今回は東京都内での社会科見学のスポットとして「領土・主権展示館」と「産業遺産情報センター」をご紹介します。観光のように気軽に訪れる性質の場所ではないかもしれませんが、時事問題、歴史問題、日韓関係などに関心がある方なら有意義な内容になると思います。

「領土・主権展示館」について

「領土・主権展示館」とは、竹島、尖閣諸島、北方領土の主権問題についての国民世論の啓発、国際社会に向けた発信の一環として、説明資料等を展示するために開設された博物館。運営主体は、日本政府の内閣官房領土・主権対策企画調整室。2019年5月に、虎の門三井ビルディング1階に移転し、展示内容も拡充されています。入場料は無料で、予約も不要です。

「領土・主権展示館」へのアクセス

領土・主権展示館に最も近い駅は東京メトロ「虎ノ門駅」です。虎ノ門駅の3番出口から徒歩3分、150mほどとなります。また下の地図のとおり、東京メトロ「虎ノ門ヒルズ駅」からも徒歩5分、300mほどですので大変便利です。領土・主権展示館の見学は1時間もあれば十分ですから、虎ノ門ヒルズ駅のすぐそばにある「虎ノ門ヒルズ」で、ショッピングや食事などをあわせて楽しまれるのがおすすめです。

「領土・主権展示館」の見学レビュー

領土・主権展示館が入っている虎の門三井ビルディングは地味なオフィスビルではあるのですが、建物の外からも中の様子が見えるガラス張りとなっていて、開放感があり、気軽に入りやすい雰囲気になっています。

エントランスには、北方領土を代表する”ゆるキャラ”「エリカちゃん」(エトピリカという鳥がモチーフ)の大型フィギュアが立っていて、この「エリカちゃん」の姿も外から見えるのですが、お子様でも親しみのもてる雰囲気を醸し出しています。

館内では、そのほかにも、竹島を代表する”ゆるキャラ”「りゃんこちゃん」(ニホンアシカ)と尖閣諸島を代表する”ゆるキャラ”「アルバちゃん」(アホウドリ)も起用し、これらゆるキャラたちにより楽しい雰囲気で領土・主権について学ぶことができるような配慮がなされています。

館内は、北方領土のコーナー、竹島のコーナー、尖閣諸島のコーナーと、3つのコーナーに分かれており、それぞれ多くの写真パネルや資料を用いて詳細な解説がなされています。領有・主権に関する歴史的な経緯や法的根拠などの説明にとどまらず、島における動植物の生態系の話など、個人的には興味深い内容でした。

写真・文献以外の資料として、特に興味をひかれたのは「リャンコ大王」のはく製の展示でした。見た目にもインパクトがありますが、絶滅危惧種であるニホンアシカのはく製は世界で唯一この一体だけだそうです。

「竹島の主」として恐れられていたリャンコ大王と、日本人の漁師たちとの葛藤など、当時の生活に密着した生々しいエピソードがあるということは大きな発見でした(ゆるキャラの「りゃんこちゃん」とは、ちょっとキャラが違っているような気はしましたが)。

以上のとおり領土・主権展示館は、その重苦しいテーマとは正反対に、開放感があり、親しみやすく、おおむね良い感じの博物館でした。館内での写真撮影OKという点も評価できます。ただ欲を言えば、今後は次のような点を改善していけばいいのかなと思いました。まずは国民の意識啓発が最優先ですから、外国語による併記が無いのは仕方ないかもしれませんが、将来的には東京観光で立ち寄った外国人への広報という観点から、少なくとも英語での併記はあって欲しいと思いました。

また、今どきの流行りにあわせて”ゆるキャラ”を起用し、お子様でも楽しく学べるような雰囲気作りは評価できますが、展示パネルにはやや文字が多すぎると感じますし、難しい漢字にフリガナをつけるなどの配慮がなされていない点も気になりました。こういう点では韓国の反日歴史教育が一歩先を行っており、こちらとしても学ぶべきところがあるのかなと思いました。

「産業遺産情報センター」について

「産業遺産情報センター」とは、公式サイトによると、世界遺産「明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業」のインタープリテーション戦略(2017年11月 ユネスコ世界遺産センターに提出)に基づき、「明治日本の産業革命遺産」の8県11市に立地するビジターセンターの中核センターとなる施設とのこと。

説明が難しいですが、「インタープリテーション」とは展示・解説のような意味だそうです。「明治日本の産業革命遺産」は23もの構成資産からなるところ、各構成資産における展示・解説では、個別の展示・解説にとどまってしまい、全構成資産を俯瞰した歴史的な意義や文化財どうしの関連性などの展示・解説ができない。つまり、全構成資産を俯瞰しての展示・解説をする目的で設立されたのが産業遺産情報センターであるようです。

産業遺産情報センターの運営主体は、日本政府の内閣官房産業遺産の世界遺産登録推進室。2020年3月に、東京都新宿区の総務省第二庁舎別館内1階にてオープンしました。入場料は無料ですが、当面の間は事前予約制となっています。予約は電話・FAX・メールのいずれの方法でも可能です。詳細は公式サイトをご確認ください。

「産業遺産情報センター」へのアクセス

下の地図のとおり、最寄り駅は都営大江戸線「若松河田駅」で、ここから300m、徒歩3分ほどです。公式サイトに詳細な行き方があります。「若松河田駅」のほかにも、東京メトロの「東新宿駅」や「早稲田駅」などからも徒歩圏内になります。産業遺産情報センターでの見学の帰りに東新宿駅近くのコリアンタウンで食事をするなどのコースがおすすめになりそうです。

地図をよく見ていただければ問題ないのですが、注意すべき点として、産業遺産情報センターがあるのは、総務省第二庁舎の本館ではなくて「別館」になります。住所となる「新宿区若松町19-1」は一辺100mほどもある広い敷地になっていて、その北側に面する大久保通りという大きな通り沿いにあるのは本館のほうです。別館は、その敷地の南東隅に位置しており、大久保通りからは入ることができません。上の地図のとおり、狭い路地を通って南東の入口から入ることになります。

「産業遺産情報センター」の見学レビュー

まず事前予約についてですが、わたしの場合、一般の見学受入れ開始直後に予約を試みたためか、非常に混雑しており第1~第3希望全てNG。担当の方との調整の結果、ずいぶん先の日時での予約となってしまいました。受入れキャパの拡充を図っているようなので、今後は徐々に予約もとりやすい方向になっていくものと思われます。

最寄りの都営大江戸線「若松河田駅」から徒歩で向かいましたが、公式サイトでのアクセス方法はよく読んでおいたほうがいいと思いました。住宅街の細い路地を入っていきますので、最低限、地図(ナビ)は見ながら行ったほうがいいです。別館に通じる裏門には「総務省」の看板は出ていますが、「産業遺産情報センター」の表示は無いので、結構不安になりました。

この裏門を入って行ってすぐにある建物が別館で、その1階に産業遺産情報センターがあります。目立たない自動ドアの横に「産業遺産情報センター」の表示が、ここでやっと見つかりました。

予定の10分前に到着したこともあり、受付をした後、待合室でビデオ上映を見ながらガイドさんが来るのを待ちます。この時間枠で予約した人は私のほか2名、合計3名だったようです。ちなみに館内での撮影は一切禁止、スマホの利用も禁止になっており、カバンなどは受付横のロッカー(無料)に預けて手ぶらの状態で見学することになっています。ご注意ください。なお、受付では、見学終了後に提出するアンケートと、メモ紙、筆記用具が渡されます。いろいろ書き留めたメモ紙は持ち帰り可能となっています。

時間となりガイドさん2名が到着。見学ツアーに出発です。それぞれ鉄鋼業OBのガイドさんと造船業OBのガイドさんとのことで、専門技術に関することはもちろんですが、歴史的背景や現地の様子など広範囲かつ詳細な知識をお持ちでした。また、お話も面白かったです。

館内の展示は、明治日本の産業革命遺産全体を、その歴史的な流れに沿って写真やパネルで展示・解説する構成になっていました。ガイドさんがその道の専門家であったということもあるかとは思いますが、とくに八幡製鉄所や長崎造船所などに焦点をあてて、その歴史的な意義や日本近代化における役割などを、興味深いうんちくを交えながらお話いただきました。

私も八幡製鉄などについて断片的な知識はありましたが、今回のツアーにより、それらを歴史の流れに沿ってつなげて整理し、全体をうまく理解できたように思います。それがこの産業遺産情報センターの設立目的ですから、当然と言えば当然ですが。そう言えば、長崎の「グラバー邸」が明治日本の産業革命遺産の構成資産の1つになっていたのですね。お恥ずかしながら今まで知りませんでした。

ガイドさん2名による見学ツアー(前半)は1時間ちょっとで終了です。とても楽しかったので、あっという間の時間に感じました。続いて後半は別のガイドさん2名にバトンタッチとなります。軍艦島(端島炭鉱)ご出身の2名のガイドさんによる見学ツアーで、軍艦島に関する展示・解説に焦点をあてたものとなります。

お一人は、戦前に幼少期を軍艦島で過ごされ、戦後は軍艦島の炭鉱で勤務されたOBの方、もう一人は、戦後生まれで幼少期を軍艦島で過ごされた方でした。そこで生活された方ならではの、軍艦島での暮らしや、島民らの様子、とくに朝鮮から出稼ぎで来ていた方々の暮らしぶりや、日本人との関係など、説得力のある生の声を聞くことができたのは、とても貴重な収穫でした。

やはり話の中心は、韓国からのいわれなき「強制労働」という批難に対する反論。2名のガイドさんは、韓国側からの指摘がいかに荒唐無稽・事実無根であるかを、1つ1つ丁寧に反論されていらっしゃいました。政府として、この後半にあたる軍艦島パートの見学ツアーにここまで力を入れているのは、やはり韓国から挑まれた歴史戦に勝ち抜くことであり、産業遺産情報センターのもつ第2の目的であることに間違いはなさそうです。

後半の見学ツアー最後は、韓国メディアや国内左派メディアへの取材対応に対するガイドさんらの愚痴のような話で終わってしまいましたが、元島民の方々の貴重な実体験を直接聞くことができた点は非常によかったです。前半・後半あわせて2時間という長時間の見学ツアーとなりましたが、ここですべて終了。アンケートを書いて受付に提出しました。

この産業遺産情報センターは、将来的には予約不要で、ガイド無しでも自由に見学できるようなシステムにしていく方針であるとのことでしたが、パネルに書かれていない生の体験談がここに足を運んでこそ得られる貴重な情報ですから、個人的には絶対にガイドはあったほうがいいと思いました。産業遺産情報センターの運用自体はまだ試験的なのかもしれませんが、将来的にはもう少しアクセスの良い場所、民間のオープンな施設に移転したほうがいいかもしれませんね。

まとめ

今回ご紹介した「領土・主権展示館」と「産業遺産情報センター」は、入場無料ながら展示が充実している政府系の博物館でした。いずれも歴史問題や特に日韓関係がからんでくるため、たしかに重いテーマであり、心構え無しに気軽に訪れるのには向いていないかもしれませんが、少しでも関心をお持ちなら是非とも足を運んでいただきたい施設です。

Have a nice trip!