【前編】東京から日帰りで熊野古道を味わう方法-日帰り可能なプランを計画

2004年に世界文化遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」では、寺社で構成される霊場だけでなく、その参詣道「熊野古道」が構成要素となっているのが特徴です。今風に言えば“聖地巡礼”の道ということですかね。長い歴史にわたって多くの巡礼者の思いが込められた道ですから、一種のパワースポットでもあるように思います。

さて、この熊野古道。以前から気にはなっていましたが、かなりの広域にわたっていますし、紀伊半島のなかでもややアクセスが不便なエリアにあります。一週間くらいの期間をかけて巡礼の旅をしなければいけないような先入観をもっていました。しかし、ふと思い立って、東京から日帰りで熊野古道の魅力を味わってみることはできないものかと考え、計画を立ててみました。

今回は、東京から日帰りで熊野古道を味わう方法の【前編】として、東京からでも日帰り可能で、しかも熊野古道の魅力を味わうことのできるプランを計画してみましたので、それをご紹介することにいたします。

熊野古道のなかでは「大門坂―熊野那智大社コース」がおすすめ

世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」における三大霊場とそれぞれの熊野古道の位置関係を把握しつつ、そのなかでも熊野古道初心者が日帰り旅行するのに適したコースを以下のとおり考えてみました。

世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」における三大霊場と熊野古道の位置関係

世界文化遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の全体像は下の図(「新宮市観光協会」より引用)にある通りです。大きく3つのエリア「霊場」が構成要素になっています。紀伊半島の中央に逆三角形状に配置されたこれらの霊場は、和歌山県北部にある金剛峯寺を中心とした「高野山」、奈良県中部にある金峯山寺を中心とした「吉野・大峰」、そして和歌山県南東部にある熊野那智大社をはじめとする「熊野三山」です。これらは三大霊場とも呼ばれています。

そして、各霊場・各方面と熊野三山を結ぶ参詣道が「熊野古道」となっており、上の図のように「大辺路」、「中辺路」、「小辺路」、「大峰奥駈道」、「伊勢路」、「高野山町石道」という名で呼ばれています。見ていただければおわかりの通り、三大霊場と熊野古道をあわせると紀伊半島全体に及んでおり、これらを全て観光・参拝することは長期間の旅行でない限りは一度や二度の旅行では無理だということがわかります。

「熊野九十九王子社」を通り霊場に隣接する熊野古道を選ぶ

このように熊野古道の数はあまりにも多いですから、目的地とすべき熊野古道を選ぶにはもう少し条件を絞っていきたいと思います。ここでは、中世の頃の巡礼者の思いを追体験できるような痕跡があることや、参詣先の霊場に隣接することなどを条件にしてみます。

参考となるのが「熊野九十九王子社」です。熊野九十九王子社とは、各熊野古道沿いにおいて創建された神社の総称で、熊野三山への参詣道中に各王子社で安全祈願の御幣が行われたものです。現存する又はその痕跡が残る王子社は下の図(大阪府「熊野街道」より引用)のとおりで、とくに紀伊路と中辺路に集中しているのがわかります。

道中で王子社を訪ねながら熊野古道を歩いて霊場に参詣することができれば、中世の頃の巡礼者の思い、たとえば平安時代に皇族の方々が熊野御幸をされたことを追体験しやすいのではないかと思います。なお、王子社が最も多い紀伊路ですが、中世の頃の状態が維持保存されていないといった理由から、熊野古道には違いありませんが、残念ながら世界遺産の構成要素からは外れていいます。ということで、目的地は霊場のひとつ熊野三山周辺の熊野古道に絞られそうです。

大門坂から多富気王子を経て熊野那智大社をお参りするコースがおすすめ

結論から言うと、下の地図にある通り、中辺路の最後の王子とされる「多富気王子」を通って熊野那智大社をお参りするコースをおすすめします(本記事ではこのコースのことを「大門坂―熊野那智大社コース」と仮称します)。

多富気王子の少し手前にある「大門坂」というところから中辺路・熊野古道を歩いて熊野那智大社に至る1kmほどの道です。石段が続く上り坂の少々きつい道ですが、杉木立の森の中を通るとても雰囲気のある道となります。普通なら1時間以内でゴールにたどり着けます。

参考までに他の候補についても触れておきますと、2番目の候補としては、下の地図のとおり、小辺路の「三軒茶屋」から「祓殿王子」を通って熊野本宮大社に至る2kmほどの熊野古道になります(Googleマップでは実際の熊野古道の経路が表示されないのでご注意)。

この熊野本宮大社に隣接するコースも杉木立の森の中を通るいかにも古道という雰囲気でいいのですが、新宮駅からバスで1時間以上、紀伊田辺駅からはバスで2時間以上かかるというアクセスの難しさが、日帰り観光として適していないと考えました。

ちなみに、熊野三山の残りのひとつである新宮にある熊野速玉大社。ここは新宮駅から近く交通の便はいいのですが、街中に位置していることもあり、昔ながらの雰囲気をもつ古道が隣接しておらず、付近の王子社も街中にあるような状態ですので、今回の旅行の趣旨からは外れるものと考えました。

念のためもう一度お断りしておきますが、今回は、「熊野古道初心者が日帰りで熊野古道の魅力を感じる」という観点から、わたしが独断と偏見でおすすめするのが「大門坂―熊野那智大社コース」ということでした。これとは異なる観点であるなら、そのほかの熊野古道や霊場のほうをおすすめできる可能性もありますので、ご注意ください。

東京から日帰りで「大門坂―熊野那智大社コース」を旅するプラン

では、わたしがおすすめする「大門坂―熊野那智大社コース」を東京から日帰りで旅行するプランを立てることができるかどうかを確認して見ることにします。結論から言うと、十分可能となります。なお、大阪方面や名古屋方面からの日帰り旅行を考える場合にも参考になります。

東京から紀伊勝浦までの最速アクセス

「大門坂―熊野那智大社コース」の最寄り駅となるのはJR紀伊勝浦駅です。そこで、東京を出て当日中に最も早く紀伊勝浦駅に到着できるプランを考えて見ることにします。なお、ここで紹介する運行ダイヤは2020年11月時点のものですので、旅行される場合には実際の運行ダイヤを確認いただけますようお願いいたします。

JAL便+特急くろしお号を利用する場合

JAL便+特急くろしお号を利用するのが当日中に東京から最速アクセスできる方法になります。JAL213便から特急くろしお1号に乗り継ぐ方法です。わたしもこの方法を使いました。

JAL213便は、羽田空港07:35発・南紀白浜空港08:50着です。南紀白浜空港からJR白浜駅までは路線バスが出ており、南紀白浜空港を9時すぎに出たバスはJR白浜駅へ09:30頃到着します。ここで白浜駅10:10発の特急くろしお1号に乗り継いで、紀伊勝浦駅に11:34着となります。

ちなみに、特急くろしお1号は新大阪駅07:33始発です。大阪方面から紀伊勝浦に行く列車としては最速アクセスになります。東京発の新幹線で最初に新大阪に到着するのが08:22(のぞみ1号)ですから、当日中に新幹線を利用して新大阪駅から特急くろしお1号に乗り継ぐことはできません。注意が必要です。

新幹線+特急ワイドビュー南紀号を利用する場合

上記の「JAL便+特急くろしお号」に比べると20分ほど到着時間が遅くなりますが、新幹線から特急ワイドビュー南紀1号を利用する方法も使えそうです。この方法では東京駅06:15発の新幹線のぞみ3号で名古屋駅07:50着、名古屋駅08:05発の特急ワイドビュー南紀1号に乗り継いで、紀伊勝浦駅に11:57着となります。割引金額の適用如何にもよりますが、金額的には「JAL便+特急くろしお号」よりもこちらのほうが安くなる可能性が高いと思います。

なお、名古屋方面から紀伊勝浦に行く列車としてもこの特急ワイドビュー南紀1号が最速アクセスになります。

紀伊勝浦から東京からまでの最終アクセス

以上より、東京をはじめ大阪や名古屋からの最速アクセスにより、紀伊勝浦駅には11時半~12時の間に到着できることがわかりました。続いて、帰りのアクセスについて、最も遅く紀伊勝浦を出て当日中に東京に戻れるプランを考えて見ることにします。

JAL便+特急くろしお号を利用する場合

まず、帰りもJAL便+特急くろしお号を利用する方法で調べてみます。羽田空港への最終便であるJAL218便は、南紀白浜空港18:40発となりますが、紀伊勝浦駅からJR線でJAL218便に乗り継ぐためには、紀伊勝浦駅15:24発の特急くろしお30号に乗る必要があります。この列車は白浜駅16:50着となり、JR白浜駅17:13発の南紀白浜空港行き最終バスに連絡できる最終列車になるからです。紀伊勝浦駅15:24発というのは、現地で3時間ほどしかないので、「大門坂―熊野那智大社コース」の日帰り旅行で使うのはちょっと厳しいですね。

ちなみに、大阪方面へ帰るのであれば、もうすこし余裕があります。紀伊勝浦駅18:02発の特急くろしお36号を利用すれば新大阪駅22:06着なので当日中に大阪に戻ることができます。なお、この時間で乗り継げる東京行きの新幹線は残念ながらもうありません。日帰りではなくなってしまいますが、大阪駅00:34発のサンライズ出雲・瀬戸を利用したり、夜行バスを利用するのなら、東京に戻る場合にこのスケジュールを選択するのもアリでしょう。

新幹線+特急ワイドビュー南紀号を利用する場合

帰りについては、新幹線+特急ワイドビュー南紀号を利用するのが当日中に東京に戻ることのできる最終アクセスとなります。特急ワイドビュー南紀8号から新幹線のぞみ56号に乗り継ぐ方法です。わたしもこの方法を使いました。

まず、紀伊勝浦駅17:10発の特急ワイドビュー南紀8号で名古屋駅20:49着。ここで名古屋駅20:59発の新幹線のぞみ56号に乗り継いで、東京駅22:36着となります。これが紀伊勝浦を最も遅く出て当日中に東京に着ける方法のはずです。なお、紀伊勝浦から名古屋方面に帰る列車としてもこの特急ワイドビュー南紀8号が最終アクセスになるはずです。

「大門坂―熊野那智大社コース」を東京から日帰り旅行の現実性

以上のとおり、東京からの2種類の最速アクセスにより、紀伊勝浦駅には11時半~12時の間に到着でき、紀伊勝浦から東京へ戻る最終アクセスは「新幹線+特急ワイドビュー南紀号」を利用すれば、紀伊勝浦駅を17時過ぎに出発すればよいことがわかりました。現地での滞在可能時間は11:30または12:00~17:00となり、5時間以上あることがわかります。ちなみに、現地での滞在可能時間は、大阪の場合は11:30~18:00とさらに余裕があり、名古屋については東京の場合と同じ11:30または12:00~17:00となります。

紀伊勝浦での滞在可能時間が5時間以上あるので「大門坂―熊野那智大社コース」の日帰り旅行は十分可能のように思いますが、念のため現地でのバスの時間も調べて見ることにします。紀伊勝浦で利用するバスは、熊野御坊南海バスの31系統となります。行きはバス停「大門坂」で下車し、下の地図のように「大門坂―熊野那智大社コース」を歩いた後、熊野那智大社などを参拝して、帰りはバス停「那智の滝前」から乗車して紀伊勝浦駅に戻ります。

この31系統バスの時刻表を見ると、紀伊勝浦駅に11:34に到着(JAL便+特急くろしお号を利用)した場合には、バス停「紀伊勝浦駅」11:45発の便を利用することができ、バス停「大門坂」には12:04着です(運賃430円)。紀伊勝浦駅に11:57に到着(新幹線+特急ワイドビュー南紀号を利用)した場合には一本あとの便になり、バス停「紀伊勝浦駅」12:25発の便を利用することができ、バス停「大門坂」には12:44着です。

帰りは紀伊勝浦駅17:10発の特急ワイドビュー南紀8号に間に合う時間となるので、バス停「那智の滝前」16:24発の便を利用し、バス停「紀伊勝浦駅」には16:48着です(運賃630円)。ちなみに、当日中に大阪まで戻る際に紀伊勝浦駅18:02発の特急くろしお36号を利用するのであれば、一本あとの便、バス停「那智の滝前」17:04発、バス停「紀伊勝浦駅」17:28着が利用可能です。

つまり、この「大門坂―熊野那智大社コース」の日帰り旅行プランでは、現地スタート地点のバス停「大門坂」には遅くとも12:25に到着でき、現地ゴール地点のバス停「那智の滝前」には16:24までに戻ればいいので、現地での観光・参拝に使える時間が約4時間となりますから現実性のあるプランだとわかります。

まとめ

今回は、東京から日帰りで熊野古道を味わう方法の【前編】として、東京からでも日帰り可能で、しかも熊野古道の魅力を味わうことのできるプランを計画してみました。行き先は熊野古道のなかの「大門坂―熊野那智大社コース」がおすすめであり、東京からのアクセスは、往復ともに「新幹線+特急ワイドビュー南紀号」を利用するか、あるいは往路は「JAL便+特急くろしお号」で復路は「新幹線+特急ワイドビュー南紀号」を利用するのが現実的な方法となります。

続いて、「【後編】東京から日帰りで熊野古道を味わう方法-「大門坂―熊野那智大社コース」のレビュー」では、今回ご紹介したプランに従い、わたしが実際に東京から日帰りで「大門坂―熊野那智大社コース」を旅行したレビューを紹介しています。ご興味のあるかたは、【後編】のほうもご覧いただけますと幸いです。

Have a nice trip!