日本統治時代の炭鉱や神社もある「猴硐(ホウトン)猫村」のご紹介

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台湾北部にある「猴硐(ホウトン)」をご存知でしょうか?台鉄の猴硐駅を中心に広がる猴硐は、村中に人懐っこい猫がいて、猫好きの天国。「猴硐猫村」と呼ばれ、近年は日本人観光客からも人気のスポットとなっています。

ところで、日本統治時代にこの猴硐には大きな炭鉱が開発され、猴硐村は炭鉱の町として発展しました。今回は猫だけでない猴硐猫村の魅力についてご紹介してみたいと思います。

猴硐猫村へのアクセスと、猴硐猫村から九份老街への移動

台北市内から猴硐まで直接行く場合は、台鉄(台湾国鉄)を使うのが最も便利です。台北駅から猴硐駅まで、区間車(各駅停車)で約1時間。運賃はNT$56で、現金で切符を購入することももちろん可能ですが、悠遊カードがあれば日本の交通系ICカードと同様にタッチだけで改札を通過できるので便利です。

ところで、猴硐猫村は地理的にも九份老街まで約7kmと非常に近い位置にあるので、台北市内からの日帰り観光なら猴硐猫村と九份老街をセットで観光するのがお得です。

おすすめの順番としては、先に猴硐猫村を観光し、夕方に九份老街へ移動して夜の九份を楽しむ、といったイメージです。猴硐猫村から九份老街への移動方法は、おもに以下の3通りが考えられます。

新北市バス826系統を利用

下の地図にあるとおり、猴硐駅から基隆河に沿って北へ10分(700m)くらい歩いたところにある「猴硐旅客中心」(観光案内所)にバス停があります。ここから新北市バス826系統という便が出ています。この「猴硐旅客中心」を始発点として「水湳洞」というバス停が終点で、途中で「九份老街」バス停を経由します。「猴硐旅客中心」から「九份老街」までの所要時間は約1時間で、運賃はNT$15です(悠遊カード利用可)。

この826系統バスは、九份老街まで安く、しかも乗り換え無しで行けて便利なのですが、最大の難点は、土日祝日しか運行していないということ。例えば日本の連休を利用して旅行した場合でも、その日が台湾のカレンダーで平日になっていればバスは利用できません。あと、バスは1時間に1本程度と本数が少ない点や、猴硐駅からやや離れた場所にバス停があるという点も注意しておきたいところです。

台鉄で瑞芳駅まで移動してバスに乗り換える

この方法が費用をかけずに最も確実に移動できる方法かもしれません。まず、猴硐駅から台鉄で台北方面へ1駅、瑞芳駅に戻ります。猴硐駅から瑞芳駅までの区間は列車の本数も比較的多いので便利です。列車の所要時間は5分くらいで、運賃はNT$15です(悠遊カード利用可)。

瑞芳駅からあとは別の記事で説明していますが、路線バスは、827系統、856系統、788系統、1062系統などを利用して九份老街へ移動します。バスの所要時間は15分程度、運賃はNT$15です(悠遊カード利用可)。

以上のとおり2つの乗り物の乗車時間はあわせて正味20分くらいとなりますが、列車待ちやバス待ちの時間、瑞芳駅での乗り換え移動時間などを考慮して、1時間半~2時間くらいは余裕をみたほうがいいかもしれません。

猴硐駅からタクシーで九份老街へ

ややお金はかかりますが、猴硐駅から九份老街までタクシーを利用すると時間が節約でき、かつ最も楽な移動方法となります。猴硐駅から九份老街までは7km程度で、途中山道となりますが乗車時間は 20分くらいです。運賃は、NT$300~NT$350くらいになります。

ただ、猴硐駅周辺でタクシーをつかまえるのが難しいのが最大の難点です。タクシー配車アプリのUberでも、なかなか配車は難しいかと思われます。ですので、猴硐駅からタクシーで九份老街へ移動する方法は、運よくタクシーが見つかれば利用する、程度の期待に留め、基本的には台鉄とバスを乗り継いで移動する方法で計画するのが無難でしょう。なお、逆方向で九份老街から乗車して猴硐駅まで移動する場合なら、九份老街付近でタクシーをつかまえるのは比較的容易ですから、有力な移動方法の1つとしてもいいでしょう。

猴硐猫村の見どころ

以下では、猴硐猫村の主な見どころについてご紹介したいと思います。

猫づくしの村

台鉄の猴硐駅で下車し、ホームの階段を登って猫のオブジェが並ぶ通路を進むと、この駅の一箇所だけの改札口に出ます。改札口を出ると田舎駅らしい狭いコンコースになっていますが、ここからいきなり猫たちがお出迎えです。

コンコース内やコンコース横のベランダに数匹の猫たちがくつろいでいます。

このコンコースは駅舎ビルの3階あたりの高さにあり、階段を下りて地上に出ると、飲食店、お土産屋、コンビニなどが立ち並ぶ“駅前商店街”といったような場所に出ます。食事をするならこの近辺がおすすめです。日本語で「猫耳ラーメン」とか、猫をモチーフにしたようなメニューが目立ちます。

この駅前商店街のエリアにも多くの猫たちがウロウロしています。入口がオープンになった店が多いので、運が良ければ店内でも猫たちと触れ合うことができるようになっています。

駅前商店街の奥にある門柱を通って進むと、基隆河のほとりにある見晴らしのいい広場があって、そこには「瑞三鉱業整煤廠」という石炭工場跡(2020年2月時点では工事中)や、猴硐炭鉱の歴史など展示した「願景館」という資料館などがあります。

資料館の中には軽食もできる喫茶コーナーも併設されています(資料館への入場は無料)。そして、広場のあちこちや資料館の中にも、たくさんの猫たちがウロウロしていて、どの猫たちも人懐っこいので自由に触れ合うことができます。

一方、猴硐駅のコンコースにつながっている「猫橋」と呼ばれる陸橋(改札を通ってホームに行く陸橋ではない)を渡って、さきほどの駅前商店街とは反対側に出ることができます。

この猫橋は、世界で唯一の人猫共用橋なのだとか。駅のこちら側は山の斜面にできた集落となっており、陸橋から出てすぐの位置になります。

こちらの集落の特徴は、細い通路や階段で多くのお店がつながっていて、お土産屋やカフェが目立ちます。猫グッズは駅前商店街側よりもこちらの集落のほうが断然豊富です。

もちろん、こちらの集落でもたくさんの猫たちに出会えます。

通路や階段のあちこちで猫たちがくつろいでいるので、触り放題、写真は撮り放題です。

なお、自分で持ち込んだ食べ物を猫たちに与えないように、という掲示がありました。「ちゅーる」を食べさせていた人もたくさん見かけましたが、マナーはちゃんと守って楽しみましょう。

猴硐炭鉱に関する遺構

現在は廃坑となっていますが、猴硐には日本統治時代に開発された炭鉱がありました。猴硐炭鉱に関する遺構のいくつかを見ることができます。まずは、駅前商店街の奥にある広場に入ります。広場に入って右奥に「瑞三鉱業整煤廠」という石炭工場跡があります。2020年2月時点では工事中のため防護壁で囲まれていましたが、後述する「瑞三運煤橋」の上からなら中の様子がよく見えます。採掘した石炭を洗浄する工場だったようですが、かなり風化してボロボロになった廃墟でした。廃墟がお好きな方には、なかなか見ごたえあると思います。

一方、さきほどの広場ですが、地面にレールが敷いてあります。想像するに、工場で処理した石炭を貨車に積み込んで台鉄本線へ積み出すためのレールだったのではないかと思われます。現在は台鉄との接続はなく、貨車も見当たらず、ただ猫たちの遊び場になっています。広場の中央にある「願景館」には、見学を始める前に立ち寄ってみることをおすすめします。日本統治時代からの猴硐炭鉱の歴史などが展示されています。

願景館と瑞三鉱業整煤廠との間の細い道を進んで行くと橋塔が建っています。中の階段を上がって、建物の3階くらいの高さで外に出ますが、そこから基隆河を渡る橋になっています。「瑞三運煤橋」という橋です。

地形的に基隆河の対岸は山の斜面になっており、その斜面に横穴を掘るかたちで炭鉱の坑道ができていたようです。瑞三運煤橋の表面には採掘した石炭を運搬するためのトロッコのレールが敷いてあり、トロッコは坑道から瑞三運煤橋を渡って瑞三鉱業整煤廠にダイレクトに移動できるようになっています。

この瑞三運煤橋も日本統治時代に建造されたもののようですが、しっかりした造りで、まだまだ健在のようです。ちなみに、瑞三運煤橋からは、さきほどの瑞三鉱業整煤廠の様子がよく見えますし、瑞三運煤橋から基隆河の眺めもなかなかのものです。瑞三運煤橋の上には、実際に使用されていたと思われるトロッコも置いてあり、試しに手で押して動かしてみることもできます。

瑞三運煤橋を渡ったところには「猴硐礦坑休閒園區」という施設があり、ここの目玉はトロッコ「礦車」に乗って炭鉱の坑道に入って行くことができるという、ちょっとしたアトラクションがあります(運賃NT$150)。所要時間は30分程度とちょっと長いですが、トロッコに乗って坑道に入るという経験はなかなかできないので、ぜひ体験してみられるのをおすすめします。

猴硐神社

さきほどのトロッコ乗り場である猴硐礦坑休閒園區から、下の地図のとおり基隆河沿いの道を北方向に50mほど進みますと、右側、つまり山の斜面側に斜面を登っていく階段の登り口があるので、そこから階段を進んで行きます。ちなみに、この階段の登り口に向かって左側脇には、昔使われていたトロッコ用のトンネル入口があり、史跡のひとつとなっています。

階段を登って行くと小さな峠を越えるような道になっており、50mほど進むと、対向2車線の広い道路に出ます。その道路沿いに北方向に50mほど進むと、左手側に猴硐神社の鳥居が見えます。

100年以上前に建てられてものだと思われますが、石で造られた頑丈な鳥居でした。台湾に残る鳥居は、上の梁が撤去されているものをよく見かけ、残念な気持ちになることがありますが、ここの鳥居は完全な形で残っていました。

鳥居からは石段の参道が続いています。参道の途中、石灯篭や、かつて鳥居だったのかもと思われる朽ちかけた木製の柱があり、長い年月の経過を感じさせます。

石段を登りきると小さな丘の上の広場になっています。静かな場所です。猴硐神社の祠はここに鎮座していたのでしょう。現在は神社の痕跡は無くなっており、屋根のある休憩所のような簡易の構造物が設けられていました。猴硐炭鉱で働く日本人たちの心の拠り所となっていた場所だと思うと、感慨深いものがあります。

まとめ

猴硐猫村になぜ多くの猫がいるのかを調べてみたところ、炭鉱の坑道を支える木材がネズミにかじられることを防止するため、ネズミ退治の目的で多くの猫が飼われたのだそうです。そして、かつては炭鉱を守ってきた猫たちは、今では観光客を誘致して村の経済を支える存在となり猴硐の村を守り続けているのです。

猴硐猫村の炭鉱と猫の背景には日本人たちとのつながりがあって、それを象徴する神社なども見ることができるという、猴硐猫村は、台湾と日本人を知るうえで、とても重要で魅力的な史跡のひとつであると思います。九份老街とセットで是非とも訪れてみたい観光スポットです。

Have a nice trip!